1回目の「高血圧」に続き、動脈硬化の危険因子の一つで、かつては高脂血症と呼ばれていた「脂質異常症」について増山哲茂医師に話を伺う。
--動脈硬化はどんな病気を引き起こしますか
日本人の死因のトップはがんですが、2位は心疾患(主に心筋梗塞)、3位は脳血管疾患(主に脳梗塞)です。心筋梗塞や脳梗塞は、動脈が硬くなったり、狭くなったりして、血液の流れが悪くなる動脈硬化が主な原因で発症します。そしてこの2つの動脈硬化症の病気による死亡者数は、がんによる死亡者数よりはるかに多いのです。
都道府県別に疾病死亡率をみると、栃木県は脳卒中死亡率が男性で4位、女性が2位、心疾患死亡率は男性が5位、女性が4位とワースト上位にいます(順位は平成22年)。
--脂質異常症になると、どうなるのでしょうか。高脂血症と同じですか
動脈硬化の重要な危険因子の一つである脂質異常症は、LDLコレステロールや中性脂肪の量が多過ぎたり、HDLコレステロールの量が少なかったりして血液中の脂質のバランスが崩れた状態を言います。
以前は高脂血症と呼ばれていました。しかし、血清脂質には少ないことが問題のHDLコレステロールも含まれるため、平成19年から脂質異常症と病名が変わりました。余分な脂が血管壁に入り込み、血管が硬く狭くなってしまうのです。
--以前の健康診断の結果には、総コレステロールが記載されていましたが、現在の特定健康診査ではLDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値が記載されています
総コレステロールにはLDL、HDL両方のコレステロールが含まれますが、LDLコレステロール値が高くても、HDLコレステロール値も高ければ、動脈硬化が進みにくいことが分かったからです。
--それぞれの脂質の役割はどのようなものですか
コレステロールはステロイドホルモンや胆汁酸の原料であり、細胞膜の構成成分として重要な役割を果たしています。
LDLコレステロールは、血管の壁にたまってプラークと呼ばれる瘤(こぶ)を作る材料となるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。増えると、動脈硬化が進みます。
HDLコレステロールは、血管の壁から余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをするので、善玉コレステロールと呼ばれています。少ないと、動脈硬化が進みます。
中性脂肪(トリグリセライド)は、増えると、より血管の壁に入り込みやすい超悪玉コレステロールが増えます。超悪玉コレステロールの増加に伴い、HDLコレステロールが減ってしまうため、動脈硬化が一層進みやすくなります。
--脂質異常症の予防はどうすればいいですか
脂質異常症は自覚症状がないため、定期的なチェックが必要です。血液検査で脂質異常が見つかった場合は、まず食生活の改善が必要です。
血液中の脂質の量は食事の内容に大きな影響を受けます。原則は総カロリーを抑えること。特にLDLコレステロール値は運動では下がりません。肥満のある人は体重を落とすだけで、LDLコレステロールや中性脂肪の数値が下がります。もちろんコレステロールを多く含む食品や中性脂肪を増やす食品(チーズやバターなどの乳製品、鶏卵、糖分の多い菓子や果物、アルコールなど)を控え、不飽和脂肪酸や食物繊維(サバやイワシなどの青魚、大豆食品、ゴマ油、海藻類など)を多く取りましょう。
--運動はすべきですか
運動も食事と同じくらい大切なことです。できれば、激しくなく、ゆっくり長時間行う有酸素運動が最適です。中でも速歩でのウオーキングを1日30分以上、通勤や買い物などの時間を上手に活用して歩いてください。運動により脂肪が分解され、中性脂肪が減ると、逆にHDLコレステロールが増えてきます。
--内服薬が必要な場合は
軽度の脂質異常は食事と運動で改善できますが、正常値を大きく超えている場合は、定期的な血液検査や内服薬が必要かどうか、主治医とよく相談してください。
症状がないため放置されることの多い脂質異常症ですが、定期的な検査ともう一度の生活習慣見直しで、将来起こるかもしれない脳梗塞や心筋梗塞を予防してください。今からでも遅くありません。きょうから始めましょう。(聞き手高橋健治)
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増山哲茂(ますやま・あきしげ)昭和29年9月、大田原市生まれ。独協医大卒。増山内科小児科クリニック(宇都宮市平松本町)。専門は循環器科、呼吸器科。宇都宮市医師会理事、宇都宮内科医会会長、独協医大非常勤講師。
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